Adobe After Effectsで作った映像を書き出す場合のおすすめレンダリング設定を紹介します。映像のデータ納品やクライアントとやり取りする場合の参考にしてください。クライアントや制作会社でデータ形式の指定がない場合には本記事で紹介するデータ形式を提案しておくとよいです。指定がある場合には、そのフォーマットを守るようにしましょう。
After Effectsから動画データを書き出す手順がわからない場合は、「After Effectsから動画を書き出す方法」を参考にしてください。
本記事はAdobe After Effects CS5、CS6、CC2014を前提に執筆しています。
1つの映像ファイルとしてプロジェクトを書き出す際のおすすめレンダリング設定です。おすすめのフォーマットはQuicktimeのファイル形式であるMOV形式での書き出しです。MOV形式ではデータ圧縮、変換する複数のコーデックに対応しています。AVI、MPEG形式での書き出しは基本的に映像のクオリティが残念な結果になる場合が多々あります。AVIの可逆圧縮形式は別。
映像制作依頼がはじめてのクライアントの場合、下記でおすすめするレンダリング設定で書き出された映像ファイルは再生できない場合がほとんどです。WindowsのOSを使用している場合、Quicktimeがインストールされていない可能性が高く、Windows XP、Vistaの使用率が極めて高いためです。その場合、Windows Media Playerで再生できる形式(AVI、MPEG形式)で対応することになります。最近のMedia PlayerではMOVやMP4も再生できるようになりましたが、まだまだ使われていることが少ないです。また、PCスペックが低いために再生できない場合もあります。そんなクライアント様にはQuickTimeのインストール方法記事を参考にQuickTimeのインストールしてもらうか、訪問した際にインストールさせてもらうとよいです。
おすすめのレンダリング設定
After Effectsのおすすめレンダリング設定3つの特徴と設定方法です。非圧縮のMOVファイルか低圧縮のMOVファイルがおすすめです。
- Quicktime フォト – JPEG (品質95%)
- Quicktime PNG
- Quicktime アニメーション
設定1: Quicktime フォト – JPEG (品質95%)
設定方法
レンダーキューパネルからロスレス圧縮 -> 出力モジュール設定パネルから形式: Quicktimeを選択 -> ビデオ出力の形式オプション -> Quicktimeオプションパネルのビデオコーデックから「フォト – JPEG」を選択し、基本ビデオ設定の品質を「95」にする。
100%で設定しない理由は、100%以下の設定値でもほとんど見栄えに差異が無いからです。データ容量の削減を検討するのであれば「95」あたりの設定値がおすすめです。JPEG圧縮の特性を理解したうえで、99から95あたりの設定値で最良値を設定してください。[*4]
特徴
– ファイルサイズが小さい
– 参考: 1分映像(864×480 29.97fps)を書き出すとファイルサイズが239MB、レンダリング時間1分18秒
– レンダリングが早い
– 非可逆圧縮。劣化するが数回再レンダリングする分にはある程度のクオリティを保つ。
納品前のプレビュー用映像なんかは大体この形式でクライアントに提出する場合が多いです。ただし、データ容量を抑えることができるフォトJPEG コーデックは、1つのファイルでアルファチャンネルを持つことができません。アルファチャンネルが必要な場合は、別途アルファチャンネル用のデータを用意するか、これから紹介する2つのQuickTime出力形式設定を検討してください。[*5]
設定2: Quicktime PNG
設定方法
レンダーキューパネルからロスレス圧縮 -> 出力モジュール設定パネルから形式: Quicktimeを選択 -> ビデオ出力の形式オプション -> Quicktimeオプションパネルのビデオコーデックから「PNG」を選択
特徴
– ファイルサイズがそこそこ大きい
– 参考: 1分映像(864×480 29.97fps)を書き出すとファイルサイズが952MB、レンダリング時間8分44秒
– レンダリングがとても遅い
– 可逆圧縮形式。PNGは可逆圧縮形式なのでオリジナルソースと同じクオリティのデータとなる。QuickTime PNG形式であれば2次使用で再レンダリングしても劣化が少ない。[*3]
設定3: Quicktime アニメーション
設定方法
レンダーキューパネルからロスレス圧縮 -> 出力モジュール設定パネルから形式: Quicktimeを選択 -> ビデオ出力の形式オプション -> Quicktimeオプションパネルのビデオコーデックから「アニメーション」を選択する。[*2] 品質設定を「最高」にすることで可逆圧縮としてファイル出力できる。
特徴
– ファイルサイズがデカい
– 参考: 1分映像(864×480 29.97fps)を書き出すとファイルサイズが1.9G、レンダリング時間1分35秒
– レンダリングが早い
– 可逆圧縮形式。[*1] オリジナルソースとほぼ同じクオリティのデータになるため、再レンダリングしても劣化が少ない。
特に指定がなければ納品時に良く使う形式です。上にもありますが、無圧縮に比べてファイルサイズを抑えることもでき画質もオリジナルとほぼ変わらないレベルなので自分は好んで使っています。
※非圧縮形式は、元のデータと完全同じクオリティのデータを書き出すわけではありません。完全に同じにする場合は、可逆圧縮(ロスレス圧縮)が必要です。
番外編
3パターンほど書き出し方法を解説しましたが、取引先によっては指定の形式でお願いしますといった場合がよくあります。無圧縮にこだわる方はこだわりますし、Final Cutでの編集を想定しているのでProRes系でお願いしますという場合もあります。ちなみにProResはWindowsからは出力できません。APPLE Mac miniを買ってください。何ちゃってProResはWindowsでも出せた気がしますが・・・。
ウチではProResを書き出す為だけにAPPLE Mac miniが1台置いてあります。
After Effects 映像制作講座ページの紹介
OM Blogでは、After Effects作業中に遭遇する問題を解決するテクニックを映像制作講座ページにてまとめています。After Effects作業で出るエラーの解決方法から、小ワザ等を随時更新しています。
また、あなたの困ったを募集しています。After Effectsを使い始めたは良いけど操作がわからない、謎のエラーが出た、カタカナで書いてあるこの言葉の意味等ありましたらコメント欄、お問い合わせフォームから気軽に連絡をください。専門学校でAfter Effects講師経験もあり、現役のクリエイターである管理人がお答えします。
プロのテクニック満載のAEおすすめ書籍
AE界では有名なVideo Copilotの記事を参考にAfter Effectsでのおすすめの書き出し、レンダリング設定を紹介しました。レンダリングだけに限らず、After Effectsを使用して映像制作する上でプロのテクニック、知識は必要です。
映像制作では欠かせないプロスタジオのテクニックを解説した書籍があります。日本語版はAfter Effects CS4までの対応となっていますが技術的なことはそこまで大幅に変わっていません。ビジュアルエフェクトとコンポジットをより極めたい方はぜひ読むべき1冊です。Video CopilotのAndrew Kramer (アンドリュー クレイマー) 氏もおすすめしていた書籍シリーズです。
この記事は、Video Copilotの「Which Render Settings?」を参考にしています。
- 2015/10/24: [*1] 「非圧縮形式(無圧縮)」の表記を「可逆圧縮」に訂正。
- 2015/10/24: [*2] QuickTime アニメーション出力設定に関する品質設定の事項を追記。
- 2015/10/24: [*3] QuickTime PNGの説明を追記修正。
- 2015/11/29: [*4] QuickTime フォトJPEGの設定値の補足説明を追記。
- 2015/11/29: [*5] QuickTime フォトJPEGのアルファチャンネルに関する説明を追記。
neo says
いつもためになる情報有難うございます。因みにフォトjpegの書き出しで100%ではなくて95%で書き出す意味は何でしょうか。はやり100%だとスペック不足でカクカクに再生されてしまうからでしょうか。
ochiaimitsuo says
コメントありがとうございます。
QuicktimeのフォトJPEG コーデックの100%と95%では出力結果にほとんど差異が無いからです。その結果、データ容量を抑えることができますし、スペック不足でカクカク再生されにくくなるという事にもつながりますね。95%をおすすめしていますが、その他の数値でも最良の結果が得られる場合もあります。
naito says
ビルトインのコーデックの種類が多く、毎回どうすればいいのか悩んでいたので
すごく参考になりました。 ありがとうございました!